黒沢尻見聞古記 10 火事につき繕米のこと

一、元祿八年六月五日夜四ツ時分。興三右衛門火事に逢申候。傳兵兵はもらい火にて燒申候。北方は作右衛門家さんさん覆し火留申候。南は太郎右衛門家半分やけ申候へ共家ぬきほこし漸く火留申候。就い作事米願上申候へは興三右衛門、傳兵衛儀火事に逢候へば尤にて作右衛門、太郎右衛門儀は尤家覆し、火留申候へ共繕米之儀に候間御前にも御米無之候間取次申間敷由、御城代衆被仰右興三右衛門、傳兵衛、願上候書付斗被遊、太郎右衛門、作右衛門繕米願書は御返しに成候。就て傳兵衛御米貮駄、興三右衛門に御米七駄、御貸被下御證文參候。

一、御藏米九駄は佐々木三郎兵衛、小森林興五左衛門、御代官所黒澤尻町、興三右衛門、傳兵衛火事に逢申候に付御米拜借仕度と訴訟申上候に付壹割付に貸被遺候間七駄は興三右衛門貮駄は傳兵衛當暮より二ヶ年に元利上納之筈相渡し可被申候也。

 

　元祿八年六月九日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　十郎右衛門

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　甚左衛門

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　九兵衛

 

　大迫御藏　工藤長左衛門殿

　　　　　　山屋勘右衛門殿

　　　　　　飯岡　庄兵衛殿

 

　右之通御證文　小走興作持參即時興三右衛門、傳兵衛母に相渡し下し申候。以上

　　　　　いノ六月十六日午ノ刻