長編記録映画「鬼剣舞」のパンフレットみたいなのが、ありました。
全文載せます。
おりゃ!
長編記録映画 カラーワイド
鬼剣舞
ふるさとと祖国のうた
映画を愛し
日本の民族芸術の美しい開花を願い
そして
わが祖国を愛するすべての人々に
訴えますーーーーーーーー!
全国農村映画協会・共同映画株式会社
9月読売ホール
一ヶ月ロードショー
同時に全国横断上映
北風は ヒョーヒョーと
農民の怒りを伝え
春風は 日本のうるわしい
明日を呼ぶ!
民族のなかに生きつづけた
誇り高きうたとおどり
雪と炎と土がおりなす
感動のドキュメント!
日本とはなにか………
民族とはなにか………
そして、
民族芸術とは何なのか………
これらのことを、国民の一人ひとりにあらためて問いかけてみたい。このことを企画の大きなねらいとして、私たちはこの映画の製作をすすめています。
日本には、失ってならない美しいものがいっぱいあります。民族芸術がそのひとつです。わが国の民族芸術は、この美しい国土、美しい四季の移りかわりのうえにつちかわれてきました。
日本民族が生み、育て、伝えてきたかずかずのたいせつな伝統芸術、民族芸術……それがこんにち破壊され、失われようとしています。
出稼ぎ、過疎、挙家離村……。いわゆる”高度経済成長政策”は、わが国の農業、農村を崩壊させ、民族芸術の貴重な継承者である農民たちを、その土地から追いだしています。このままでいくと、日本の伝統芸術、民族芸能はなくなってしまうことでしょう。民族芸術をまもることは、私たち祖国を愛するすべての人びとのしごとなのです。
わらび座は、農民のなかから民族芸術を掘り起こし、継承し、再創造し、そして日本中の広汎な人びとにみてもらう活動を、この二十年間一貫して追求してきました。私たちは、この映画で、わらび座の現在までのそのような活動を正しくとらえ、わらび座がどういう姿勢で伝統芸術の継承にとりくんでいるのか、日本の伝統芸術、民族芸能を継承発展させるということはいったいどういうことなのか、その運動の本質は何なのか、創造するものとそれを支持するものなどを、私たち全体の問題として考えてみようとおもいます。そうすることで、民族芸術のほんとうのまもり手は誰なのか、それを妨げている力は何なのかを明らかにし、この映画をみて下さる多ぜいの人たちみんなが、そのまもり手になることをつよく訴えたいと考えます。
この記録映画の素材はわらび座のこんにちの活動ですから、とうぜんその調査、取材、研究、創造、普及、そして公演という活動内容がカメラでとらえられるでしよう。そして、わらび座のゆたかで多様なステージが、映画のなかにふんだんにとりいれられ、カラー・ワイドのスクリーンいっぱいに、日本民族のエネルギーがけんらん豪華にくりひろげられます。
映画はまた、わらび座の創造普及活動を支えている集団生活にカメラを向けます。雪ふかい秋田県の根拠地、集団のなかの個人、学習や結婚や育児……。人間的なよろこびやくるしみやなやみについて、この映画はあたらしいおどろきをもってみなさんに語りかけるでしょう。
ことし六月、わらび座は創立二十周年記念作品、歌舞劇「東北の鬼」を世に問います。映画は、その創造の過程をつうじて、見る人一人ひとりの胸のなかにふかい感動と、生きることのよろこびを呼びおこしていきたいと考えます。
全国の映画を愛し、民族芸術の開花を願うすぺての仲間のみなさん!
私たちは、みなさんがこの記録映画の製作と上映を成功させて下さるよう、心から訴えます。
新人 島崎監督に期待する 美濃部亮吉
荒廃してゆく農村に鋭いメスを入れ破壊されてゆく民族芸能に深い愛情をもって、仕事をすすめようとしている新人監督、島崎嘉樹さんに拍手を送ります。
どうか日本の民衆の中で生き続けた民族芸能を誇り高くうたいあげてください。そしてその破壊をすすめるものへの怒りをこめて、守り発展させるために青春と生きがいを捧げる人びとの
美しさを描いてくださるよう、お願いいたします。 (東京都知事)
「どうかいいお仕事を」
全国農協婦人組織協議会 会長 白井小浪
数年前、岩手県農協婦入部大会に招かれた私は、大会がはてた後の一日ひまをえて、北上市農協をたずねたことがありました。そしてはからずも土地につたわる民俗芸能(鬼剣舞)を一見することが出来ました。演じてくれたのが北上市農協の職員-―おりからの寒空にしたたるあせをぬぐいもせず、はげしく舞われる青年の群舞は、何の予備知識もない私にも封建圧政下の農民の心をひしひしとつたえてきて息もとまる思いでみつめたものでした。
その時の感動は時をへだてた今も思い出すたびせんりつににたものとなって背すじをはしります。以来民族芸能こそ日本の農民の暮しのかなしさをこめた心のふるさとだという思いがぬきがたく私の心にしみつきました。「荷車の歌」以来農協婦人部とは囚縁あさからぬ全農映が、その「鬼剣舞」を柱に民族芸能と農民魂のかかわりを民族歌舞団わらび座の活動をとおして、美しい長編映出にまとめようとしていると聞き、いいしれぬ喜びと心のふるえる様な期待にじっとしていられない心持です。どうか全農映さん、いいお仕事をなさって下さい。「荷車の歌」と同じように日本中の農村の人々に見てもらうよう、上映には私たちも積極的に協力したいと思います。
岡本文弥(新内師匠)
鬼剣舞はわらび座の公演で拝見して胸がわくわくするほど感激しました。今でもあれを思い出すと胸がわくわくするのです。ご苦労も多いことと思いますが、ぜひぜひ成功するよう
期待しています。
激励のことば……
「農民の生産のよろこびと苦しみ、怒の中から生まれた民族の伝統と豊かさ、それを守り育てる若い青春群像をえがく」というこの映画に期待します。
日本教職員組合委員長 宮ノ原貞光
現在の農村破壊政策に対する強い抗議になると思います。
大友 純 俳優
立派な映画ができることを期待して……
霜多正次 作家
地のもの、民族的なものの強さ、美しさこそ大切だと思います。
金 達寿 作家
製作上映の活動を支持します
いわさきちひろ・大坂志郎・大槻健・永井智雄・村田達郎・柳田謙十郎・諸井昭二・清洲すみ子・真壁仁・江口渙・若杉光夫・窪田精・早船ちよ・吉村公三郎・深尾須磨子・丸岡秀子・松谷
みよ子・三島雅夫・林家正蔵・家城巳代治・直井栄三郎・門倉訣・蔵原輝人・土井大助・松田解子・福谷保夫・岸輝子・古田れい子・河原崎国太郎・中村翫右衛門・瓜生忠夫・宇野重吉・山住正己・小牧正英・山本薩夫・今井正
民俗のなかに生きつづけた
ふるさとの誇り高きうたとおどり
それを守り育てる青春群像の記録!
百姓のこころに鬼が住むという
製作スタッフ
製 作
民族歌舞団わらび座
企 画 山形雄策
山内達一
山口義夫
山岸豊吉
製 作 岩崎太郎
坂斉小一郎
山口逸郎
脚 本 島崎嘉樹
片桐直樹
監 督 島崎嘉樹
音 楽 原 太郎
撮 影 江連高元
照 明 岩崎五郎
<みんなでつくる>ことを基本に……
島崎 嘉樹
徳川二百七十年間に、百十件もの百姓一揆をしなければならなかった岩手の農民たちが、あの素晴しい民族芸能「鬼剣舞」をつくりあげました。農民たちは、鬼の面にどんな思いを託したのでしょう。「鬼剣舞」という激しい踊りで何を訴えようとしたのでしょう。私は、ここ数年「鬼剣舞」は農民の怒りの踊りではないだろうかと思いつづけていました。いわゆる高度経済成長政策で、農業をつぶされ、農村から追い出されようとしている今日の農民の苦しみや怒りは、百二十年前、弘化、嘉永の時代、三閉伊の一揆に起ち上った一万六千の岩手の農民の苦しみや怒りとまったく共通しています。
私は「わらび座調査班」の民族芸能調査行について歩きながら、日本にとって失ってはならない美しいもののひとつが民族芸能であり、それがいかに農民に愛されているのかを痛いほど知ったのでした。だが、農村の現実はきびしく、民族芸能の貴重な継承者である農民の生活は、根こそぎつき崩されようとしています。このままで行くと、日本の伝統芸術、民族芸能はなくなってしまうことでしょう。農村破壊の様相は、民族芸能の面から見ても大へん深刻であり、政治に対する怒りが腹の底からわき上って来るのです。この映画では、民族芸能の継承、再創造をいう「わらび座」の仕事を通して、今日の農民の苦しみ、怒りを訴えたい。「鬼剣舞」を通して、農民の怒りをぶっつけたい。その怒りを国民共通の怒りにできる映画にしたいと思います。「鬼剣舞」は岩手の農民がつくりました。長い間かかって、練りに練りあげ、農民みんなでつくりあげた民族芸能です。
そしていま「わらび座」では、集団で、民族芸能の継承、再創造という大きな仕事にあたっています。この、集団で創造して行くという基本は、私たちの独立プロの仕事でも同じだと思います。「わらび座」の人たちと、シナリオつくりからつきあいはじめて一年たちました。あと半年を、私たちスタッフは、「わらび座」の人たち、「わらび座」を支えている農村の人たち、そして支持応援してくれる多くの人々と一諸に、この映画づくりで過します。<みんなで映画をつくる>ーーーーこのことを基本に、スタッフー同がんばりたいと思います。
ーーーーーーーーーーーシナリオよりーーーーーーーーーーーー
しんしんと降る雪。
野を山を、家々を埋めつくすように雪が降る。
その風景の中に〈田植え踊り〉の囃子が聞えてーーーー。
積雪の中で、今年も豊年を願い、田の神への祈りをこめて踊られている〈田植え踊り〉踊り手は、小学校、中学校の子供たち。身につけた赤やピンクのカラフルな衣裳が雪にはえ一きわ美しい。
遠く連なる奥羽山脈。
真白な雪におおわれた東北の大地。
その大地を一列になって〈田植え踊り〉の少年少女が行く。
「民族芸能には
自然を愛し
人を愛し
労働を愛してきた
働く人々の心がある」
土手の枯草にへばりついていた雪がパシッと割れて流れに落ちる。
雪を運ぶせせらぎの音が高まり、雪どけの流れは川から川ヘーーーーーーーー。
一段と流れを早めて流れる早春の川。
ネコヤナギが芽をふき、蕗のとうが春を告げる。
今、長い冬に閉ざされていた東北の大地は活動を始める。
雪の野面を肥料運びの橇の列が続く。
橇を引くたくましい農婦たち。
美しい自然の移り変りの上にくりひろげられるきびしい労働。
残雪の田に土入れる客土の仕事。
傾斜地の畑を耕し、種まく農民。
梅、桜、リンゴ……いっせいに花開く東北の春。
満開のリンゴの花に囲まれた校庭で、激しく打ち鳴らされる〈もみ太鼓〉。
ハッピ姿の若者二人がもみにもむ。
その激しい動きに圧倒されて観ている子供たち、先生、父兄たち。
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全中教発第60号 昭和46年6月25日
都道府県農業協同組合
中央会 御中
全国農業協同組合中央会
長篇記録映画「鬼剣舞」について
農村の永い伝統のなかで育ってきた民族芸能の美しさ、すばらしさを歴史のうえからふりかえり、このままでは崩壊せざるを得ない厳しい現実にも目をあて、これを守り育てて行こうという意図で、全農映と共同映画が民族芸能の継承と再創造に取り組んでいる「わらび座」の全面的な協力で製作を進めていたドキュメンタリー長編記録映画「鬼剣舞」は、ロケーションを行なった青森、秋田、岩手県中央会、地元農協の積極的な協力もあって順調に進み、7月完成成のはこびとなりました。
この映画は民族芸能の豊かさを中心に、いわゆる高度経済成長のなかで大きくゆれている農村と貴重な民族芸能の継承者をも失ないつつある実態という大きな問題に取り組んでいるということで注目されており、美濃部東京都知事をはじめ多くの方々から激励と期待が寄せられているものです。
上映は9月1日から東京読売ホールでのロードショーを皮きりに全国を上映する予定ですので、その際は関係者が貴会にご挨拶に参上いたしますので、何卒格別のご配意をいただけますようお願い致します。
農協特別製作協力券
¥300円
前 売 券
¥450円
[1回]
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